ASEAN移住労働者の権利合意は嬉しい知らせか?(2)

国内法案を国際水準へ

財団の記事はさらに、次の内容を強調しています。「ASEAN加盟国はみな、国際労働機関条約の中核的基準を批准する必要がある。そして、国内法案をその水準に合わせるべきだ。また、同条約の移住労働者に関する第94号・題143号、および全ての移住労働者とその家族の人権保護に関する国際連合憲章の批准を前向きに検討すべきだろう。」また、ASEAN加盟国の中で「フィリピンを除くどの国も家事労働者についての具体的な法令が整っていない。さらに、マレーシアとシンガポールには海外移住家事労働者についての免責条項がある。ASEAN地域の移住労働者にとって、家事労働業は最も一般的な職種であることを踏まえると、この状況は極めて異常だ」とも述べられています。

ASEAN諸国による国際連合憲章批准の、特に労働機関条約の移住労働者に関する記録を見てみると、フィリピンが17項目を批准しているのを筆頭に、続いてインドネシアの12項目、カンボジアの11項目の順になっています。また、全ての移住労働者及びその家族の人権保護に関する国際連合憲章に関して、ASEAN加盟国10カ国の中で批准を行ったのは、フィリピンとインドネシアのみでした。カンボジアは署名は行ったものの、批准には至っていません。ここで注目すべき点は、2007年5月12日に、インドネシアのジャカルタで行われた移住労働者の権利の保護・促進に関する、ASEAN市民組織・労働組合協議会のワークショップです。このワークショップでASEAN移住労働者のためのタスクフォースがASEAN諸国に推奨したのは、「労働機関条約の(移住労働者に関する)第97号・143号・181号について、移住労働者とその家族の人権保護に関する国際連合憲章と併せて、迅速に批准すること」だったということです。

ASEAN加盟諸国による批准記録から、各国の足並みが極めて不揃いである点を踏まえると、興味深いことに関係文書がASEAN合意と銘打たれた理由が、加盟国が複数の選択肢を持つことに同意したと示されていることから理解できます。また、合意に「ASEAN加盟国現行の国内法令・規則・政策に基づく」という限定的文言が付け足されていた理由もわかります。このような限定的文言は、第3章(移住労働者とその家族の基本的権利)、第4章(移住労働者の特定の権利)、第5章(労働者派遣国の義務)、第6章(労働者受け入れ国の義務)、第7章(ASEAN加盟国の義務)で見られます。外務省はどれも「全てのASEAN合意と同様に、移住労働者に関する合意の遂行も、各加盟国のそれぞれの法令の対象となる」と述べています。

しかしながら、明らかに不完全ではありますが、現在のASEAN地域内での人権の在り方や、ASEANメンバー各国が、移住労働に関する国際連合や国際労働機関の水準に合わせるために対処していることを踏まえると、ASEAN合意は正しい方向への第一歩とも言えます。他のASEAN加盟国が、移住に関する国際連合のその他の条約や国際労働機関の移住に関する条約と同様、自国の国内法令・規則・制限について調整を行い、移住労働者とその家族の人権に関する国際連合憲章に参加すると決めた場合は、多少現実的ではないかも知れません。けれども、ASEAN地域の人々は、政府に移住労働者の権利についての十分な配慮を要求すべきです。いつかASEAN地域国間で移住を決めた人々が、移住の際に伴う困難や苦しみ、侮辱的な行為から無縁となる日が来るでしょう。

この記事は元外交官により書かれたものです。彼は、マカウのフィリピン総領事として最後にこの記事を掲載しました。現在は、フィリピン大使財団株式会社(PAFI)の海外労働者の保護に関する活動グループの主要メンバーです。

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