ASEAN移住労働者の権利合意は嬉しい知らせか?(1)

2007年にセブで開かれたASEAN首脳会議で、移住労働者の権利の保護と伸長に関する宣言が採択されてから10年が経ち、2017年11月、マニラでのASEAN50周年を記念するサミットで同盟国10名の首脳陣が署名を行い、ついに同宣言の同意が行われました。

フィリピンの大手新聞記事では合意についてASEAN地域の移住労働者、特にフィリピン人海外移住労働者にとって良い影響を及ぼす幸先の良い一歩として扱う見出しが見られます。フィリピン外務省は、移住労働者の権利に関する合意を、サミットの主な成果の一つとして引用し、宣言の同意について次のように述べました。「移住労働者の性別・国籍に関する公正な処遇を掲げ、家族の訪問の権利を与えること、パスポートの押収・不当に高額な斡旋料や採用料金を課すことの禁止、職場での暴力や性的虐待からの保護するものとする。また、労働者の保護向上のために人材採用担当者の管理を行い、公正かつ適正な報酬と社会福祉手当、また労働組合や協会に参加する権利を順守する…」というものです。

議会上院の労働委員会議長、ジョエル・ヴィラヌエバ上院議員は、今回の合意について、「(合意は)ASEAN地域が労働基準を改善し、特にASEAN連合内の労働者の法的権利を守るという約束の証です。また、フィリピン人海外労働者(OFW)のための独自の部署の設置を含め、議会上院で保留中となっている法案の完成・強化を促進してくれるでしょう」と述べています。

手放しで称賛できない事情

しかし、今回の合意は、国内外、各方面からの懸念を受け手放しで称賛できるものとは言えませんでした。ジャカルタ所在の人権のためのASEAN議員(APHR)は、「先週のASEANサミットで採択された移住労働者の権利を盛り込んだ新地域的合意は、地域全体での適切な保護の提供ができていない」と、捉えられとの報告を受けています。ASEAN首脳陣が、移住労働者の権利の安全保障合意に達したことについて称賛が起こりましたが、APHRは合意に関する最終文書は十分ではなく、法的拘束力のある地域条約を含めた、より強固な保護が必要だと述べています。地方議員は、「文書で用いられている言葉、特に『国内法令・規制・政策』に関する、約束の条件付けをするような条項は、潜在的な効果を台無しにしたし、ASEAN人権宣言を含む、これまでのASEAN文書に見られる問題のあるアプローチを反映した」と見ています。

フィリピンのAPHRの委員会メンバー代表、テディ・バギラット氏は次のように述べています。「移住労働者に関する合意は許容度が高く、国内法令や政策に合わせて保護の制限を言明することができるため、重大な規定を順守しないという選択肢も基本的に可能です。我々は以前にもASEANの文書でこの手の制限的表現を目にしたことがありますし、このような制限が、何百万人と言うASEAN諸国国民の権利を侵しうる様々なことをもたらしてきました。ASEAN首脳陣が移住労働者の権利をこのような形で制限するような決断を下したことは非常に残念です。」「人権は普遍的なものです。人権は国内法令より優先されるべきで、抑制されるべきものではありません。」インドネシアの別のAPHR委員会メンバー、エバ・クスマ・スンダリ氏は、このように話します。「ASEANは人身売買に関して法的拘束力のある条約に同意することが可能だったのだから、移住労働者に対しても同様の措置を取るべきです。この合意を遂行するためには、実行計画の発展のファスト・トラッキングを行うと共に、法的拘束力のある法律文書について、新たな議論を行うことが得策でしょう。そうすることで、移住労働者の人権を守るための政策が現実的になり、ASEANの政治的意思を証明できるはずです。」

任意ではなく、拘束力が必要

在外フィリピン人労働者の国際的連合組織とされる、ミグランテ・インターナショナルは、次のように述べています。「人権侵害が最も起こる移住先での労働者の保護の立法化に対する理解が少ない中、移住労働者の保護のために闘い続ける上で、移住労働者の人権の保護促進に法的拘束力が伴うことが重要です。ASEAN加盟諸国にとって合意内容の実施が任意的な場合、どこで働いたとしても、どこに移住したとしても、合意の原則の内容が力強かったとしても、労働者はそのメリットを最大限に活用することができません。」

「ASEAN憲章により、『非干渉主義』の概念はASEAN内で効果的に策定され、『加盟国主権の尊重』の必要性に敬意を表して、人権義務についての言明を避けるため継続的に利用されてきました。また、『非干渉主義』により、地域的、また政府間の協力と経済発展という目標を重要視するあまり、永続的に人権侵害が起こっています。移住労働者の人権の保護と促進に関する合意は法的拘束力を持つべきだし、ASEAN加盟諸国はそのために精一杯努力する義務を負うべきです。」

個人的な意見ではありますが、今回のASEAN合意は、この地域の人権に関する全般的な状況、そして加盟国が移住労働者の人権の保護・促進を謳う、法的拘束力を持つ国際文書を支持している状況から判断されなければなりません。

移住労働者が置かれている状況、および彼らの人権については、ドイツのハインリヒ・ベル財団基金により、2015年11月23日付けの記事で適切かつ包括的に描写されています。そのタイトルは「ASEAN地域における労働移住」で、次のように述べられています。「ASEAN地域の移住労働者は非人道的な条件下での生活、労働を行っている。この状況を改善するためには、政策、移住産業、雇用主の報告義務責任などに、もっと注意を向けなくてはならない。ASEAN地域の移住者は普通の移住・安全な移住経路での移住ができていない状況にある。その状況とは、高額、違法な移住費用、人材派遣会社や職業斡旋業者とのトラブル、移住時に起こる虐待、人身売買、女性への暴力および性的搾取・虐待、多くの不法移民、低賃金、長時間労働、搾取的な労働条件、給料の未払い、職場の安全性と健康の問題、労働法では認められていない家事労働、不法移民労働者の犯罪化と拘留などだ。移住労働者の人口が年々増えるにつれて、彼らが、これらの非人道的行為を体験をする可能性も高くなっている。」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です