ASEANの移民労働者に大きな一歩

労働移住という現象は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済発展と密接に絡み合っています。ASEANメンバー諸国は、移住労働者が行き来し、外国の労働力から大きな利益を得てきました。

2015年に世界銀行が行った調査によると、ASEAN地域で暮らし働くおよそ1,000万人の海外移住者の約3分の2、680万人ほどの労働者がASEAN地域内から移住していると見られています。事実、国際労働機関(ILO)のデータでは、ASEAN諸国の中でフィリピンが、インドネシアを抑え、最も多く他のASEANメンバ国に労働者を送り出していることになっています。

一方、フィリピン人労働者(OFW)も含め、移住労働者のASEAN地域内での移住先は、第一位からブルネイ、シンガポール、マレーシア、タイの順番になっています。
そこに、この移住労働者の権利の保護と伸長に関するASEAN合意が、地域機構にとって大きな分岐点としてみなされたであろう理由が垣間見えます。この合意は、先週マニラで閉幕した、第31回ASEANサミットASEANメンバー諸国によって署名されました。

この合意(または「協定書」。ASEAN分野別委員会の同僚の多くがこう呼ぶため)は、2007年1月にセブ島で採択された「移住労働者の権利の保護と伸長に関するASEAN宣言」の中で、ASEAN加盟国がまとめた一般的原則について詳しく述べています。この宣言はASEAN移住労働の支持者には「セブ宣言」と広く言われています。

セブ宣言には、移住労働者の権利を保護・促進するためのASEAN加盟国の義務と誓約に関して「聞こえの良い声明」が盛り込まれているだけなのに対し、2017年の合意では、移住労働者の権利についての詳細が具体的に表されています。例えば、自分のパスポートを保持する権利、労働に関する苦情を申し立てる権利、移住先の国に自由に入国する権利などです。

合意にはまた、移住元・移住先の両国が移住労働者に対して負う特定の義務が列挙されています。例えば、法外な手配料・雇用手数料を禁止する義務、雇用条件を明記する規制やガイドラインの発令、公正な労働条件・報酬の供給、暴力や性的虐待からの保護などが挙げられています。

専門家によると、「自らの意思に反して不法就労者となってしまった」労働者の「問題を解決する」ことを義務付ける声明を受け、この合意に不法就労者について盛り込んだことは大変な偉業だとしました。

ロドリゴ・デュテルテ大統領が誇らしげに述べたように、移住労働者の権利に関するこの合意は、「社会保護政策を充実させ、正義、また人道的かつ公正な処遇を与え、国民のための公共医療サービスを提供することが記されための画期的な文書」です。

この合意の締結にASEAN地域ブロックが10年以上かかったことを考えると、これは本当に画期的です。いくつかの重要課題のため、文書合意に向けた交渉は何年もこう着状態にあったのです。

対話の前進を図り、フィリピンは長官のシルベスター・ベロ3世が陣頭指揮を取る労働雇用省を通じ、この合意に取り組むために3度の「退任」を指示しました。ASEAN労働大臣退任(2017年2月19・20日、ダバオ市)、ASEAN高官退任(2017年3月20・21日、パサイ市、ソフィテル・フィリピン・プラザホテル)、ASEAN労働高官退任(2017年8月25・26日、パサイ市、コンラッドホテル)です。そして、3度目の時には合意が最終的に締結されています。

交渉の停滞の打開を図るため、ASEAN労働高官の間では秘密裏に行われた話し合いもありました。公にはされていませんが、ベロ氏はこの合意への同意を取り付けるため、交渉担当者の説得をしにインドネシアまで行ったとされています。

名前も顔も知られていないフィリピン人高官の10年にも及ぶ尽力を考えると、この合意はASEAN議長国の中心議題であると真にみなされるべきです。けれどももそれは、フィリピンだけでなく全てのASEAN加盟国の偉業なのです。ヨーロッパ連合(EU)は、地域統合モデルとして持ちこたえてきましたが、そのEUですら移民の権利については言うまでもなく、移民のための地域合意の採択には至っていません。

もちろん、この文書は法的拘束力がないため蔑視する批評家もいます。けれどもASEAN加盟諸国は「合意の精神のもと」常に協力してきました。重要なのはASEAN同盟国が自分達の特定の義務を認識することだとベロ氏は言います。

さらに、今後この合意に効力のある執行手段を持たせるために、今回の合意がASEAN諸国内の移住元・移住先の間の二国間協定を結ぶきっかけ、土台となりうるのだと説明します。

つまり、移民の権利のための戦いは合意の締結で終わりではないということです。合意締結後のASEAN労働大臣の務めは、「ASEAN合意の内容を具体的な活動に変換するための」実行計画を進展させることです。

私の観点では、ここにこそ、全ASEAN諸国の共通、あるいは同一の労働条件基準が含まれるべきなのです。結果として、また10年という月日が流れていく前にそのような実行計画を作ることが、ASEAN地域ブロックにとっての挑戦なのです。
幸運を祈るばかりです。

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